社会的手抜き

NHKで放映された「大心理学実験」を紹介しながら、私なりの考えを述べたい。

アクシミリアン・リンゲルマン(フランスの心理学者、1861~1931)。20世紀初頭に社会的手抜きの実験を行い、「リンゲルマン効果」と呼ばれている。綱引きで、2人で引き合う場合は、本人の筋力の93%、3人では、85%、8人では、49%しか力が出ない。この現象は、世代や年齢、性別を問わずに起きる。理由は分からないが、集団主義的社会(日本、中国など)よりも、個人主義的社会(米国、カナダなど)に多くみられる。仮説実験1、綱引きのプロが引いたらどうなるか?結果は、手抜きが起きず、変わらなかった。理由として考えられるのは、かけ声、タイミング、重心のかけ方などトレーニングの結果である。手抜きをすると負けるという勝負の経験則から、勝つためのスキルを獲得した。仮説実験2、チアガールが応援したどうなるか?結果、手抜きが起きず、変わらなかった。理由として考えられるのは、モチベーションがあがると手抜きしにくい。いい意味での周りからの期待感、励ましが大事。仮説実験3、チアガールがメンバーの一人だけ名前で応援したらどうなるか?結果、名前を呼ばれたメンバーは手抜きが起きず、変わらなかったが、他のメンバーは、もっと、手抜きが起きた。理由として考えられるのは、他のメンバーのモチベーションが下がったためと考えられる。他のメンバーにも個々に応援すれば、仮説実験2と同様以上の結果になったかもしれない。駅伝や運動会の応援などでの旗振り、声援など容易に想起される。また、ターゲッテイング効果である。限定何名、50代だけなどターゲットを絞ることで、購買意欲が益す。

手抜き効果を軽減するための組織論的創意工夫、①適正な人数の工夫、一方的に伝えるのではなく、考えさせるには、3人から4人である。この小グループ化を促進すること。これは、シェアリングの2人から4人で行うのも同様である。②モチベーションの工夫、大人集団であれば、外的動機付けよりも内的動機付けの方が望ましい。本当に行いたいものに、外的動機付けを行うとかえってやる気をなくすという「アンダーマイニング現象」が生じてしまう。③ターゲットの工夫、いつまで、これだけと期間や対象物を絞ることでやる気が出る。