ドライブ・マイ・カー

 

濱口竜介監督の映画『ドライブ・マイ・カー』が国際長編映画賞。私がこの映画を見て、印象に残ったのは、家福悠介を演じる西島秀俊さんとその愛車の専属ドライバーの渡利みさき演じる嶋崎透子さんの「どよーん」とした目です。「どよーん」とした目からは、「感情を押し殺し」、「今を生きていない」、「過去とらわれ」などが推察されます。感情を情動と読み替えると、我々は日々多少なりとも「喜怒哀楽」が正弦波のように動いています。その正弦波を制限して、波を平坦にすることが「感情の押し殺し」です。「今を生きる」とは、嬉しいときは嬉しく、悲しいときには悲しく、その瞬間瞬間を味わうことにあります。「過去のとらわれ」は「心のストッパー」みたいなものです。その二人の会話が成り立つのは、愛車サーブ900ターボの運転するとき、つまり、この映画のタイトルです。人は、感情を押し殺しても、安心・安定を求めるものです。それは、自分が許せる「ひと・もの・こと」が媒体となるのです。「ぐっとくるフレーズ」を最近講座の中で紹介するのも、こうしたことをきっかけに、心のストッパーが外れることがあるからです。こうした「日々の現象」に気づけるか、気づけないか、味わえるか、味わえないかを、毎年「サイコエジュケーション」で投げかけ続けています。